人材の選定 [講孟余話]

講孟余話 第2巻 梁恵王 下 7章

この章は、人物の登用、判断についての論が展開されています。
そして、最後に、刑罰についても同様に記載されています。

ここでは、3つのテーマを考えたいと思います。

1)人物登用について

孟子は、有能な人物の登用について、
「左右の近臣がみなあれは非常な人物だとほめても、すぐには登用してはならない。
 重臣たちがみなあれは非常な人物だとほめても、すぐには登用してはならない。
 国中の人がみんなあれは非常な人物だとほめても、
 なおよく自分で見極めて、これなら大丈夫、
 非常な人物だ、と思ってから登用されるべきです」
といっています。ちなみに、解任の場合もこれと同様です。

これは、現代では相当の違和感があります。
こんな登用抜擢では、
ビジネスにおいては、スピード感を逸し、
とても対応できない、そう感じます。
ただし、
このような選定眼、というのは必要かと思います。
つまり、
自分だけの目でなく、
上司だけの目でなく、
部下だけの目でなく、
世間の目だけでなく、
その一つ一つの目が、どういう判断をしているか、
すべての評価を自分が把握しているかどうか、
が重要だと思います。
登用や解任、ということを考える際、
常に、これら4つの目の評価を、
自分が把握しているかどうか、
把握していないならば、
しっかりと確認をして、
最終判断の材料とする、
これが重要なこと、と思います。

2)刑罰について

孟子の論理の中で注目したいのが、
上記の人材の登用についての選定の流れと、
死刑、の決定についての流れが全く同じ、であるということです。
これは、司法の独立、というような概念のない社会であるが故、と解釈できます。
つまり、
政治の理屈と、刑罰の理屈の理想論が、同一理論、というのが、
司法の在り方、を考えるときに、
ヒントがあるのではないか、と思います。

司法は司法で、政治は政治で、行政は行政で、
それぞれ現代の制度は分離自立し、
三権分立しているわけですが、
それはそれでいいのですが、
この3つの中で、
統一の思想的ベース、があってしかるべきではないか、と思うのです。
欧米や、多くの国では、
そこにあるのは、宗教に基づいた倫理観、です。
共産圏には、マルキシズムという価値観がありました。

権力が分離し独善を阻止する、というのは理想の形、と思いますが、
3つの権力が、
相反する思想で動いていは、
話がまったくかみ合わないでは、
イエスと仏陀がどちらがえらいか、みたいな話になりかねません。

日本には、今、
そのような、ベースとなる倫理観、価値観、というものが、
欠如していると考えています。
そして、それは、
戦後のアメリカ支配下において、
「意図的に」なされてきた、と思っています。
証明するものはありませんが、
おそらく、それは間違いないと思っています。
そして、国家、というものを見た場合、
国家を支え、国民をまとめるのが、
そのベースとなる価値観、倫理観、であるというのは、
認識されていたのだと思います、当時。

ただ、日本は、戦争において、一部の暴走により、
偏りすぎた国家思想がはびこった、
という苦い経験があるので、
そのような思想の形成が悪、という過剰認識が今もまだありますので、
当時、アメリカが上記のような動きをするのに、
迎合するのもの無理はなかったと思います。

が、今は、もはやそのような時期ではないと思います。
骨のない国家、国、は、いずれ滅びる、
それくらいの意識を、為政者や思想家はもつべきだろうと思います。

3)譜代の家臣

松陰はさっ記においては、
このテーマを熱く論じています。
我々日本人は、日本としての譜代の家臣であり、
世録を受けてきた以上、
国家の受難に、
一身を賭すべきだ、と強く論じています。

孟子は、
「古い由緒ある国がらだと言って世間から尊敬されるのは、
 忠義な譜代の家臣がいることをいう」
といっております。

譜代の家臣、というのは、わかりやすくいえば、代々の家臣、といっていいでしょうか。

組織の強さ、ということを考えた際に、
一つに基軸として、
このような価値観を再導入してもいいのではないか、と思います。
適材適所、
タイムリーな人員配置、というのも、
もちろん経営において重要ですが、
この部署を長きにわたって守ってきた人、
この会社を長きにわたり支えてきた人、
そういう人の数、というのを力に変えられる経営、
という観点も非常に重要だと思います。

年功序列や終身雇用、というのは過去のものですが、
少なくとも、これらの制度は、
組織への帰属意識とロイヤルティの形成、
という面では大きな効果がありました。
組織の強さは、
組織への帰属意識なしに語れません。
現代では、主流は、理念に帰属させる方向ですが、
組織そのものへの帰属意識、も重要なのではないか、と思います。

「この会社が好き」「この組織が好き」
平易にいえばそういうことです。
一昔前は、それをシステムにしたのが、
年功序列と終身雇用でしたが、
今の現代に即した、
新しいシステム、を考える時期に来ていると思います。

たとえば、ですが、
ぜひ試してみたいことの一つとして、
新入社員は、既存社員からの紹介しかとらない、
というような感じです。
イメージとしては、ミクシィ、のような感じでしょうか。
それにより起こる化学変化、というのを検証してみたい気がしています。


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

論客日本固有の思想 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。