恒産なくして恒心なし [講孟余話]

(少し話題が古いですがご容赦ください)

講孟余話 第1巻 梁恵王 上 7章(2)

この章で2つめに取り上げたいテーマは、
仁政を広げる具体的な考え方として挙げられている、
「恒産なくして恒心なし」
という言葉です。

孟子本文では
「恒産がなくとも、いつもきちんと恒心を失わずにおられるのは、
 ただ限られたごく少数の学問や教養のある人だけで、
 一般庶民は恒産がなければ、つれて恒心もないものです。
 もしひとたび恒心がなくなると、
 わがまま、ひがみ、よこしま、ぜいたくなど人はしたい放題、
 どんな悪いことでもやってのけます。
 それを知っておきながら、止める工夫もしないで、
 いざ罪を犯すとなるとすぐさまびしばしと処罰するのでは、
 これこそ人民を無視するというものです」
といっております。

仁政において何が具体的に一番重要か、と問われて、
真っ先に答えたのが、
「人々が定職を持てるようにせよ」
ということです。
非常に明快にそのあとの解説もされており、
言わんとすることはよく飲み込めます。

ここにおいて、今のまさに日本の政治の状況を見た場合、
経済の状況からみて、なさねばならぬことはたくさんありますが、
第一に取り組むことは、
「雇用対策」
であることが明確になります。
派遣切り、ということが話題を呼んでいますが、
派遣だけでなく、多くの企業で正社員が早期退職や整理解雇などにより、
その職を失っています。製造業関連でまず進みましたが、
決算がちゃんと出そろえば、
金融、不動産、建設などがさらに、
赤字決算とともに対策として人員整理を打ち出すでしょう。
さらに、翌年は消費に影を及ぼすと、
小売りなどで働く人たちに、次なる解雇の波がやってくることと思われます。
(常に、不況の波は、川上から川下へと時間差を持ってやってきますので)

では、今、一般の人間で、
日本でとられている明確な雇用対策が何か、と言われて、
理解、把握している人は、ほとんどいないでしょう。
派遣村、ぐらいでしょうか。あれは対策ではありません。
単なる「対応」でしかありません。
定額給付金というような、ばら撒き施策が生み出すのは、
一時的な消費の喚起でしかなく、
根本的な政治・経済の施策ではない、ということは、
この孟子の言葉からも容易に想像がつきます。

雇用対策が進まず、
失業者が増えることとなれば、
その人の心は落ち着きを得ることができず、
暗にはしれば、うつ病などの患者を増やし、
動にはしれば、社会不安を引き起こすようなことになりかねません。

今一度、今の為政者、そして企業の経営者には、
目先の業容確保も大事ですが、
雇用確保、というテーマに対して、
社会的責任を考えて取り組んでほしいところです。
政治においては、お金を使うならば、
そのようなテーマに真っ先にお金を費やしてほしいですし、
マスコミ関連は、
そのようなテーマへの関心喚起を促すような報道をしっかりとしてほしいです。

ちなみに、今の政府も雇用対策は各種おしすすめています。
しかし、それは、「いっぱいある中でのひとつ」であって、
決して、最重要テーマ、とは位置付けられていません。

一つ見ますと、3兆円を使って、IT分野での雇用を40-50万に創出する、
といっています。
いいことだと思います。
けれど、3兆円というのは、定額給付金の総額に近いです。
これが6兆円になれば、100万近い雇用が創出できる可能性があるわけです。
もっと、重要視し、大々的に進めることが重要だと思っています。


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